7:小さな成功へ

 当初はアフィリエイトという仲介ビジネスをやろうと思っていましたが、どうも上手くいかないようでした。そこで、ネットビジネスの知識を使って、ネットを使わない商売をしている人にセミナーで教えるということを始めました。具体的には、自分のブログを作ってそこに人を集め、その人にセミナーの案内をしただけでした。やり方は非常にシンプルですが、マインドを会得した結果、お客さんを集めることが出来るようになっていました。

 マインドは不利な状況を乗り越えるのにも役立ちました。当時まだ若干21歳でしたから、セミナー参加者ほとんど全員が自分よりも年上でした。2倍以上の年齢の方も多くいました。若さを不利に感じることもありましたし、自分よりも知識のあるお客さんを相手に話さなければならい場面もありました。そこで役立ったのは、「先に自信を持つ」というマインドでした。メンターからは、「最初はフリでも演技でもいいから堂々と自信があるようにしてください。実力は後から付いてきます」と言われました。

 そこで私が行動に移したのは、毎週セミナーを開いて話すことでした。とにかく「出来る」「やってやる」という気持ちでスキルや経験が足りない部分を補いながら、失敗を恐れずに量稽古を重ねました。「圧倒的な量の行動」をする。これも重要なマインドの1つです。参加者が誰もいないときでも、一人で会場に行って話しました。マインドが変わるたびに、結果も良くなりました。数か月ほど続けたあるときから、急に出来るようになったのです。自信に実力が追いついた瞬間でした。

 メンターからは、お金と健康が直結していることも学びました。健康体でなければ、お金はほとんど入ってこないと言うのです。私もそれまでは、「健康なんてどうでもいいのでは」という人間でしたが、健康法を一つ増やすたびに収入がガクンと上がります。これは面白い、と思うようになりました。その健康法というのは特別なものではなく、水や解毒効果のあるハーブサプリメントを飲んだり、寝具や食事を良くしたりといったようなことです。

 健康を意識したところ、体を全く壊さなくなりました。子供の頃あれほど苦しんだぜんそくも、完治しました。健康法もある程度効果があったのかもしれませんが、最も大きな要因は「病気になる」という概念が私の脳から消えたことです。マインドで体をコントロール出来るようになり、私の体は病気というものを忘れてしまったようです。

 それから対面でビジネスを教えるコンサルティングも行うようになり、起業から5か月で月収は80万円を超えます。一番驚いていたのは私です。学歴も資格もなにもないゼロからでも、ある程度のお金を稼ぐことができるのか、と知りました。少し前まで冷凍うどんしか食べられなかった男が、急に少しリッチな生活を出来るようになったのです。古い考え方を捨てて、勉強や健康にお金を使ってマインドを変えたことが、小さな成功体験に繋がったのだと思います。

 何も持っていないと思っていたスキルについてですが、意外なものがコンサルティングの役に立つことが分かりました。その一つは、ひねくれ者だったことで身についていた、逆を考えるマインドです。あらゆる事象や考え方の逆を考えること、つまり、過去や現在の延長線上の未来ではなく、「今はない何か」が起こるという可能性を残しておくのです。借金が190万円で、銀行には5万円しかなくて、財布には小銭しかないという状況に置かれたときでも、逆の世界ーー何かが起こって月収100万ぐらいすぐに稼げる世界――を想像することができました。もしも私がその可能性すら信じることができずに、自分は絶対に上手くいかないと思っていたらどうでしょうか。きっとメンターに出会うことすらなく、本当に上手くいかないで終わっていたはずです。

 この頃からお客さんの未来がぼんやりと見えるようになりました。今お金が無いとか上手くいかない、どうしようもない、と言う人がいても、「何か」が起こる可能性が見えます。私が奇跡的にメンターを見つけたように、もしかしたら出資しようという人が現れるかもしれないし、いきなり売り上げが伸びるかもしれない。そんな都合のよいことはあり得ない、と思う人もいましたが「こういう風にやっていけば、1年後にはきっとこうなりますよ」とその人の未来を話すと、生き返ったようになり行動が変わります。それで本当に上手くいってしまうのです。楽観するのとは違い、もちろん今ある資源でどうするかを考えることもするのですが、今の状況に囚われずに自由に思考することが良い未来を引き寄せるのだと思いました。

 このような発想が出来るようになったのは、子どもの頃に病弱で、家の中や病院で色々なものを作った経験のおかげもあるかもしれません。折り紙で建築物みたいなものを作ったり、画用紙に変な絵や迷路を描いたり、何もないところから何かを作るということが好きでした。道具がパソコンに変わってからも、ゼロからホームページを作ってみたり、映画を作ったり、今ここに無いものを想像し、それを具現化していました。そういった創作の中で、現実に囚われない抽象的な思考が育まれました。

 更に、学生や会社員という上下の人間関係ではトラブルを頻発させ、足かせにしかならなかった「核心を突いて物事をズバズバと言ってしまう性格」が、コンサルティングを始めて急に活きてきました。「それ、やったらいいじゃないですか」「その人間関係は続ける意味ないですよね」などバッサリ言うと、「あ、そうですね」「スッキリしました」と一瞬で解決してしまうのです。信頼関係さえあれば本心が伝わるものだと分かりました。

 こうなると全てが繋がるもので、マジシャン時代で培われた空間や時間をうまくコントロールする能力も、セミナーやセールスに活きてきます。また、ほとんど役に立たないと思っていた飲食店の知識も抽象思考で結びつけることによって他の業種にもアドバイスが出来るようになりました。人に何かを教えるビジネスは天職だ、と思いました。「才能がない」のではなく「才能に気づいていなかっただけだ」と気づきました。後に、これは自分以外のすべての人にも当てはまることです。才能が全く無い人はいませんでした。

 成功の味を知った私は、ビジネスにさらに没頭するようになりました。このとき、働く理由は「生きるため」から「楽しむため」に変わります。朝起きたら真っ先にメールマガジンやブログの文章を書き、お客さんからのメールを返信し、寝るときと食べるとき以外はビジネスのことを考えていました。それが楽しくて楽しくて仕方なかったのです。

 仕事に集中するため、学生時代の友人とは疎遠になりました。ダイニングバー時代から3年付き合っていた彼女(最初の彼女とは違う、2人目の彼女)とも別れます。そういう人たちに構ってる暇はない、自分にはビジネスがある、当時はそう思っていました。

 抱えていた220万円の借金も難なく完済し、何でも好きなことが出来るようになりました。お客さんは自分で選べますから、嫌な人間とは付き合う必要もありません。お金も次々と入ってきますから、スタバどころか高級な珈琲店や高額のホテルのラウンジに毎日のように陣取ってノートパソコンを広げていました。大きなテレビやホームシアター用のスピーカー、高級時計など欲しかったものも全て買いました。完全に金銭感覚がマヒして千円、1万円ぐらいは小銭という感覚になり、財布の中身の金額を数えることもなくなります。そうして、「やっとあの高級クラブで出会った社長や成功者たちの仲間入りができた」と勘違いしていました。

 マインドもある意味で磨きがかかり、他人に影響を与えることも容易に出来るようになっていました。30分ぐらい話すだけで、数十万円から数百万円のコンサルティング契約を面白いように成約できました。成約率は8割以上はあったでしょうか。もちろんお客さんになった人はしっかりフォローしていました。メルマガの読者数は7000人を超え、他のビジネスも自然とうまくいくようになり、年収は最大で3000万円近くになっていました。このとき2014年、22歳でした。

 ここまで見ると成功物語に思えるかもしれませんが、ここからまた大きな転落を経験することになります。